身代わり婚のはずが冷徹御曹司は一途愛を注ぎ貫く

脱力した私は半分電話に出る気が失せていた。いい加減出なければと十コールほど鳴ってから指を近づけると、そこで止まった。

離婚することになったら悲しいと思う反面、覚悟もしなければと思う。貴仁さんは冷たいが甘いときもあった。とくに花純として会った食事の日はとても情熱的だった。そのせいで、彼の愛情が私へ向けられたとしたら……とあり得ない想像をしていたのだ。もうそんな惨めなことを考えるのはやめて、長続きしない関係は傷つく前に終わらせた方がいい。

雑な深呼吸をしてから、かけ直すためにスマホを手に取る。すると貴仁さんから、今度はメッセージが入った。

【今夜、食事に行かないか。大事な話がある】

ああ……。ついに別れ話だ。諦めの境地に入ったが、文章を見つめているとショックとともに苛立ちも湧いてきた。彼は朝、私の料理は食べないと宣言した。食事に行こうと誘ったらこちらがどんな気持ちになるか思いつきもしないのだろうか。こんなに心を乱される毎日をこれ以上は続けるのは、私も苦しい。
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