政略結婚から始める熱愛偽装
女の朝
神楽 雪乃の寝起きは最悪だ。
朝七時十五分過ぎ、けたたましく鳴り響くアラーム音にやっと気付いた雪乃は、アイマスクに親指を掛け顔を顰めながら外すのだ。
「ぅうー…寝坊しだー…」
開口一番、時計を見た事を後悔する。
春と言えど、まだまだ乾燥してる今日この頃。唇はカサカサ、喉はガラガラ。ドライアイで瞼は重い。
そして未だに鳴り響くアラームを消しに行こうと布団から出るが…ズドン!と大きな物音を立てながら床に落っこちてしまった。
「いててててて…」
幸いにも布団に包まった状態だったので、大した怪我は無し。寧ろお陰ですっかり目を覚ました。
さて、今度こそアラームを消す事に成功した雪乃は、下に降りると洗面台で顔を洗った。
お気に入りのヘアバンドは、学生時代に友人から貰った誕生日プレゼントのスキンケアセットに付いていた物だ。
使用歴数年が経過したそれは、縫い目がほつれて使用感がある。人から貰った物を大事にする精神は誇るべき…。
洗顔後は部屋に戻って、化粧水乳液美容液を次々と塗りこんでいく。
ツルツル艶々なベースが出来上がると、見事な早技で化粧を完成させてみせた。
やはり元のパーツが良いと、余計な事をせずに済む。
髪の毛は適当に一纏めにし後ろで結べば完成。
本日の予定は、プラチナカンパニーの上層部会議。その後は、取引先の会社への訪問などなど…。
主な雪乃の仕事は広告塔で在るが故、接待等が主な役目となっている。