銀色ネコの憂鬱
菫はベッドで横向きになって蓮司を抱きしめていた。
蓮司は菫の胸元に顔を(うず)めるように抱きついている。
鼻に触れる蓮司の髪が少しくすぐったい。
シャツ越しにお互いの穏やかな心音が聞こえて、なんとなくホッとする。
(気持ちが不安定になってるのかな…泣いてた時くらい小さく感じる…)
「蓮司…大丈夫?」
蓮司は(うなず)いた。
「スミレちゃん…」
「ん?」
「嫌いにならないでくれてありがとう」
「嫌いになんてならないよ。でも…」
「…でも?」
「普通に嫉妬はしてるよ。」
菫は蓮司の髪に顔を埋めて言った。
「だってあの人、サクラに会ったことあるんでしょ?羨ましいよ。」
「………全然懐いてなかったけどね」
「4年前、たくさん傷ついても絵を辞めなかったのはサクラのおかげ?」
「…うん。わかってるみたいにずっとくっついてくれてたから…」
「…わかってたよ、きっと。蓮司が悲しい気持ちだって。優しいコだね。」
菫の目が潤んだ。
「うん…」
蓮司の声も潤んだような声だった。
「会ってみたかったな。」
「…スミレちゃんならサクラも好きだったと思う」
(会ってみたかったな…その頃の蓮司にも…)

その日、菫は銀色の長毛の猫が出てくる夢を見た。
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