俺様社長は純情な田舎娘を溺愛する 〜その後のエピソード〜
5人でエレベーターに乗り込む。

戸川は、翔の手がずっと果穂と繋がってる事に気付いて驚く。

入社して7年。
今までチラッと垣間見た女性の陰はあったけど、こんなに甘い社長の姿を見た事がない。

終始優しい顔で、果穂に話しかけている。

大きなショックを受ける。 

どうして?どう言う事⁉︎
なんでこんなどこにでも居そうな小娘に⁉︎

戸川の頭の中はパニックだった。


そんな気持ちのまま、2人と別れ3人で食事に行く。

「ラーメンは無い」と新田が言い切り、
結局よく行く定食屋に落ち着いた。

「しかし、社長の溺愛ぶり半端ないっすよ。はたから見てると、果穂さんが可哀想になるくらいの執着心ですもん。」
新田が珍しく社長のプライベートを話す。

この男、若いが戸川にとってはくせ者で、
頭も良く、今まで社員の誰もが知りたがる社長のプライベートを、酒の席でさえも話した所を見た事がなかった。

「まぁ、許してやってよ。
翔にしてみれば、遅く来た初恋みたいなもんなんだろ。
あんな人間ぽい翔は俺だって見た事ない。」

「まぁ、確かに、あの人もちゃんと心を持った人間だったんだって、安心しましたけどね。」
新田はうんうんと、頷きながら焼き肉定食を食べている。

「で。戸川さんはどうしたの?
今日は全然喋らないじゃん。」
副社長から話を振られてハッとする。

「いえ、別に…。」

「戸川さんも、アレっすか?
社長の崇拝者?
社長は誰のものにもならないって、決めつけて尊いって遠くから見つめて拝んでる人種ですか?」

「そんなんじゃないわよ。
私は創立当初から社員なの、あの子達と一緒にしないで。」

「ふーん。じゃあ、あわよくば付き合いたいって思う痛い現実派ですね。」
なんなのこの男、年下のくせに歯に絹着せずに好き勝手言って、と戸川をイラつかせる。

「はっきり言うけど、戸川さんに勝ち目は無いよ。」
副社長は笑顔でそう言うが、目が笑っていない。
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