俺様社長は純情な田舎娘を溺愛する 〜その後のエピソード〜
パーティーが始まり会場に人が増え始める。

とりあえず挨拶回りだけして出来るだけ早く抜け出そうと心に決める。

「果穂、俺から離れないで。」

果穂の手を取り、自分の腕に絡ませながらそう伝える。
果穂は、頷き少し緊張気味に微笑む。

会場に入ると直ぐに雅也が婚約者とこちらに近付いてきたので、果穂に紹介をする。

ゆったりした雰囲気は果穂と似ている所もあり、仲良くなれそうだと思う。

雅也から宮崎社長夫人の居場所を聞き、
なるべく近付かない様逆の方向に歩きを進めると、

「宮崎夫人に挨拶しましょ。
翔さんと一緒なら私、大丈夫です。」
意外にも果穂がそう言って、腕を引っ張る。

本気か?
果穂を見つめ一瞬躊躇する。

だが、ここで堂々と挨拶する事で抑止力になるかもしれないと考え直す。

過去の俺との関係については、果穂は内心どう思っているのだろうかと……。

あの女が果穂に何を言うか…。

気になる事は多いが、ここは腹を括って向かうべきだ、と判断して方向を変える。

歩き始めると、何人かに呼び止められ挨拶を交わす。
大抵は挨拶もそこそこに、仕事の話しを持ち出したり、果穂の事を興味津々で聞かれたり、自分の会社の自慢話しや娘や息子の紹介をされ、ざっと10人以上と言葉を交わす。

中には、果穂がいるにも関わらず、俺の結婚を残念がる夫人や、娘を紹介したかったと恨み節を散々話す経営者がいた。
 
その度、果穂を守るようどれだけ彼女が特別な存在かを話して聞かせ、説き伏せる。

果穂は終始笑顔で挨拶を交わし、俺より一歩下がって聞き役に徹していた。

数えて15人目と挨拶を交わし、少し休もうかと果穂を気遣い、声をかけて壁側に移動する。

「私、今日お会いした全員の顔と名前を覚えられるか心配です…。」

「大丈夫。俺だって半分以上顔と名前が一致しない。こう言う場でしか会わない相手が大半だから。」
そう言って笑顔を交わす。
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