俺様社長は純情な田舎娘を溺愛する 〜その後のエピソード〜
翔の父の会社はオフィス街の一角にそびえ立つ大きなビルで、車から降りた果穂は一瞬躊躇する。

翔はというとさすが堂々としたもので、
大丈夫だと頷いて果穂の一歩先を守る様に歩き出す。

入って直ぐの受付で取り継ぎ、
社長室に来てくれという指示に従いエレベーターに乗る。

「このビルには、2度と来る事は無いだろうと思って、家を飛び出したのに、こうやって果穂と2人で来る事になるとはな。」
 
考え深げに翔は言う。

「私…今更ですけど、
堀井家の凄さを実感して足がすくんでしまいそうです……。」

果穂は不安でいっぱいで、小刻みに震える自分の手を反対の手で、ぎゅっと握りしめる。

ハハっと翔は何食わぬ顔で笑って、
 
「ただ見栄を張っただけだ、大した会社じゃ無いから心配するな。」
と、サラッと凄い事を言う。

最上階でエレベーターは止まる。

扉が開くと絨毯敷きの廊下が目に止まり、幹部がいる特別なフロアだと一目で分かる。

果穂は怖くて一歩が踏み出せない。

翔が先に降り、
そっと果穂に手を差し伸べてくれるから、何も考えず思わず手を重ねると、力強く握り引っ張り出してくれた。

ドキドキと果穂の心拍は急上昇する。
 
だけど、ぎゅっと握りしめてくれる翔の手が勇気をくれて、1人じゃ無いから大丈夫だと安心感を与えてくれる。
 
この階にも受付があって品の良い女性が、
「お待ちしておりました、ご案内します。」
と、2人を誘導してくれた。

社長室に向かう廊下でも、翔は手を繋いだままで果穂を引っ張っていってくれる。
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