白衣の王子たち

3、4歳の頃、

大人になるのは難しいだろうと

言われていたのを聞いた。

その時、わたしの両親は泣いていて、

当時の主治医、石田先生こと

蓮くんのお父さんは

唇を噛んで下を向いていたのを覚えている。

わたしは物心がついていないと思われていたのか

その余命宣告をその場で聞いており

お父さんの膝の上で

沈黙の大人達を達観していたのを覚えている。

大人達の読みが甘かった結果

わたしは鮮明にその場面を覚えているわけだけど、

知らないふりをして今まで生きてきた。

でも、そのリミットは

もう近いのかもしれない。

ここ最近、今まで登れていた階段が

登れなかったり

原因不明の発熱が続いたり

薬を飲んでも息苦しさがとれなかったり。

ずっと目を逸らしてきた現実に

嫌でも対面させられる日々。

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