ラスト・クリスマス
運命の出逢いとは気付かずに
作り笑いを浮かべて、1日中サンタ姿で立っていた私は、心身ともに疲れてしまい、早く帰りたいのに、ひとりの部屋に帰りたくないという矛盾だらけだった。

最寄駅からマンションへ向かう途中に、小さな教会がある。

【クリスマスイヴのキャンドルサービス 19時から どなたでもどうぞ】

そんな内容のポスターをぼんやり眺めていると、

「興味ありますか?」

後ろからそんな声がして、驚いて振り向くと、同世代ぐらいの男の子が居た。

「いえ…なんとなく、気になっただけです」

「俺もそうなんですけどね。思い切って、入ってみます?」

「え…」

戸惑っていたら、次にやってきた中年夫婦が、

「あら、初めての人?どうぞ中へ!」

そう言い、男の子もまた、

「…だそうですよ」

そう言って笑ったので、私は流されるように教会へ…。
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