ハイスぺな俺が北川さんに相手にされない
第十章


ある日俺は、
デスクで自分で作ったバゲットサンドを頬張っていた。

「なぁにそれ?イケメン」

田中さんの昼食はいつもの愛妻弁当だ。

「鯉のえさみたいにみえるなぁ」
「バゲットっていうパンのサンドイッチです」

鯉のえさ……
麩のことか?

「鯉と言えばさ、この前…」

げ。また魚の話!

その時、スマホに着信があった。
「すみません、電話」
「あ、うん」

画面を見ると、北川さんからだった。

「もしもし」
「あ、もしもし、加瀬さん。
お疲れ様です」

見ると北川さんは自分の席についている。
ただ、俺の方は見ていない。

「すぐそこなんだし、
直接話そうよ」
「だ、だめなんです!」
「なんで?」
「私言いたいことがあるんですけど、
加瀬さんの顔を見て言えないから
こうして電話してるんです」
「何?」

言いたいこと…?
何かあったのかな。



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