ハイスぺな俺が北川さんに相手にされない


「実はさっき買ってきた卵を
落としてしまって…
10個全部割れてしまったのです」
「あーぁ…」

なんだよ、そんなことか。
びっくりした。


「卵って落ちて割れると、
なんでこんなに
切なくなってしまうんでしょうね…

職場の観葉植物が、
病気で枯れても泣かなかったのに、
無惨に割れたかわいい卵たちを見たとき、
涙が溢れてきたんです…」


俺は、ツリーを持ってない方の手で、
北川さんの頭を撫でた。

「その卵、まだある?」
「あ、はい。
パックに入ったままだったので。
今事故現場の写真を撮ってたとこです」

はは。
撮ってどうすんだろ。

「現場検証終わったら、持っておいで。
シュークリーム作ってあげる」

皮くらいはそれで作れるだろ。


「わぁーっ!!」

北川さんは鼻をすすると、
目をキラキラさせて笑顔で頷き、
自分の部屋の中へ入って行った。


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