もう一度、重なる手

 まだ半分ほど残っているサンドイッチを無糖の紅茶で必死に流し込みながら食べていると、スマホにラインの通知が届いた。

 今度のメッセージはアツくんではなくて翔吾くんから。

〈今、昼休みだよな? 何食ってる?〉

 翔吾くんは今、外回りの移動中なのだろうか。仕事中まで私のことを監視するようなラインを送ってくる彼に、うんざりしてしまう。

 だけど無視はできないので、私はひとりでいることがわかるように、休憩スペースのテーブルに置いた無糖紅茶のペットボトルを写真に撮って送った。

〈コンビニのサンドイッチと紅茶。サンドイッチはもう食べちゃった。〉

 写真の下に付け加えると、翔吾くんはそれ以上何も送ってこなかった。

 翔吾くんが仕事の休み時間にまで私の所在を確認するようなラインを送ってくるようになったのは、ホテルのラウンジでアツくんを紹介してからだ。あれ以来、翔吾くんの私への束縛はそれまで以上に厳しくなった。

 仕事終わりにアポなしで私の家にやってくるのはもはや当たり前だし、来れない夜は私の都合なんてお構いなしにビデオ電話をかけてくる。

 アツくんのことを警戒しているのか、私のことがよほど信頼できないのか。最近の私は、狭い籠に入れられた鳥になった気分だ。自由がなくて、息苦しい。
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