この胸が痛むのは

第20話 アシュフォードside

何も言えず、黙った俺に。
これもまた、黙ったままのレイ。


「失礼致します、第3王子殿下。
 お声がけさせていただいても……?」

呼ばれて振り返ると、名前も知らないご令嬢が
ふたり立っている。
ピンクの豪奢なドレスを着た金髪と、深い赤の
ドレスに黒髪のふたり。


傍らのレイが俺に耳打ちする。


「2年のグレイシー伯爵令嬢とロイズナー伯爵
令嬢」

さすがスローン侯爵から『打てば響く』と誉め
られるだけはあるな。
学園恋愛相関図だけじゃなくて、生徒名鑑まで
レイの頭には入っているんだ。


今夜は伯爵位以上の家門が招待されていた。
ご令嬢がふたり揃って声をかけてきたという事は、俺達ふたりをダンスに誘うつもりなのか。


計画では、クラリスと2曲踊れば、もう誰とも
踊る予定はなかった。
それで他の令嬢より仲が良いのだ、と
フォンティーヌ王女にアピール出来るから、と。
そうアライアが言っていたから……
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