この胸が痛むのは
『あのアシュフォード殿下』と、姉の言葉が引っ掛かった私は、それがどんな意味なのか尋ねました。

「あ、あのね、学園では殿下はあまりお話にならなくて……普通に考えて王族ならたくさん取り巻きやら出来るでしょう?
 だけどあの御方は、本当に親しい伯爵家のご令息ただおひとりとしか、お話にならないの」


驚きました。
私の知る、と言ってもわずか半日もない御一緒した時間でしたが、その時のアシュフォード殿下のご様子は。
人好きのする、とても陽気で気さくな御方でした。


「特に女生徒など挨拶のみで、殿下の笑顔など見たこともないわ」

「お姉様も?」

「勿論そうよ、だから驚いているの。
 殿下は余程、アグネスをお気に召したのね」

姉にそう言われて、なんとも言えず、こそばゆい様な、嬉しい様な。
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