この胸が痛むのは
ただやはり悲しいかな、読めても話したり聞く事がなければ、なかなか実践的ではない。
アグネスの影響で後から学び始めた俺の方が恵まれていて、学習進度が早いのが心苦しくて、習っている事自体が話せない。

夏休みを祖母の夏別荘で過ごせたら、どんどん上達するのに、去年は行けなかったし、今年も多分彼女は行けないだろう。

でも、来年アグネスが13歳になったら。
俺はヒールを高くしたダンスシューズと、この気難しい男を彼女にプレゼントするつもりだ。
13歳以下は嫌だと言っても、1年くらい目をつぶって貰おう。

そもそもこの男は、クラリスを通してスローン侯爵に紹介して貰った。
クラリスは中等部の頃から去年まで、この男からトルラキア語を学んだ。
本人に聞くと、その頃教師就任したてのストロノーヴァ先生を図書室で見かけて一目惚れし、父親から外国語を学べと命じられて、トルラキア語を希望したのだと言う。


今でこそ言葉を交わすようになって、俺もストロノーヴァ先生の良さは理解しているが、一目惚れする、って……
それが顔に出ていたのか、クラリスがジロリと睨む。
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