この胸が痛むのは
長女の縁談の説得くらいで、長時間話し合う事はない。
……長期戦だって?
恐らく先代は前年高熱を出したプレストンを外して再びクラリスを後継者にする事を、侯爵夫妻に迫っているのだろう。
と、なれば……
クラリス家出の決行は近いな。
3年前の報酬の約束したからには、俺も準備しないとな。


夜空には美しい花火が。
俺の隣には愛しい君が。
挟んで向こうには邪魔な義兄が。

でも、丁度良かったのかな。
最近気持ちが昂ることが多くなってきて。
この前は思わず指先にキスしようとして、侯爵に見つかって出禁にされかけた。

ふたりきりだったら、今夜は危なかったな。
額だけ、頬にだけ。 
それだけでは収まらず、唇狙っただろうな。
それを悟られたくなくて、俺は無口になる。


焦らず、ゆっくり……君が大人になるのを待つよ。


俺は煩悩を振り払う為にクラリスにドレスを送る算段を考える事にした。
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