この胸が痛むのは
名前入りの愛の告白カードは、クラリスの手の内にある。
少しだけなら、付き合うしかないか。
これは家出の話だろう。


護衛で付いてきてくれた近衛騎士に、時間はかからないから此処で待つ様に指示する。
『時間はかからない』を、クラリスに聞こえるように強調したのは、とりあえず話は聞くが、ややこしいお願いはするなと暗に言いたかったからだ。


こちらに、とクラリスに続いて温室へ入る。
此処で歩きながら話そうと言うことだ。


「この夏、祖父がこちらに参った事はお聞きになっていらっしゃいますよね?」

「プレストンは君の縁談の話だと思ってる」

「……それだったら、どれ程良かったか」

隣を歩きながらだから、表情はわからないが、多分苦い顔しているんだろうな。
やはり、後継の話か。

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