この胸が痛むのは
私ごときが口を挟むべきではないのですが、つい言葉にしてしまいました。


「それはまだ出来ない。
 姉上は嫁入り前の身だ、騎士団が動けば何事もなく戻ることが出来ても傷物として扱われるだろう。
 だから、捜索はこちらだけで密かに行うしかない。
 王家への報告はいつするか、その判断は父上が決めるだろう」

「……」

「もうすぐおばあ様が来てくださる。
 そうしたら、俺も捜索に出る。
 お前はおばあ様をお支えしてくれるな?」

私が祖母を支える?
本当は私を心配して駆けつけてくれる祖母なのに、兄は敢えてそう、それが今する私の仕事だというように言ってくれました。


「先代にはどうなさいますか?」

家令が兄に尋ねました。
父が不在の現状では、兄の指示の通りに動く事に決めたようでした。


「遠い領地にただ知らせるだけの人員を割くなら、捜索に当たらせろ。
 先代には終わってからで良い」

兄はそれだけ言うと、隊長と捜索範囲を確認するから、あちらへ行くよと私から離れようとしました。
その時、急に思い付いたことがあって。


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