この胸が痛むのは
こんな時、母なら、姉なら、どうしたでしょう。


もう、私の中に姉に対する憎しみは消えていて。
こんなにも無力なくせに、貴女に対抗しようとした。


ごめんなさい、ごめんなさいと繰り返すだけでした。
呪いは失敗だったと思っていたけれど、翌日にこんな事になるなんて。

もしも、神様が時を戻して下さるなら。
私は母と姉の手を取って……でも、一体どこまで?
どこまで時を戻していただけたら、やり直せるのでしょうか。

さっきは勝手に部屋に入り、ドレスを持ち出した。
今朝、怪我を気遣ってくれた姉に意地悪を言った。
昨日は、お揃いだと見せつけて、姉の話を嘘だと決めつけた。
立ち聞きをして、クローゼットを物色した。


……もっと? もっと以前まで遡ればいいの?
ぐるぐると思考は回り、結局は同じところに戻る。
姉を呪った自分の心根が浅ましくて、醜くて。
ごめんなさい、ごめんなさい。
私が呪われて消えれば、よかった。


そして、とうとう報せが。

貴族街から遠く離れた森の中で、潰れた馬車が見つかった、と。

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