この胸が痛むのは
珍しく、俺に気遣いの言葉を掛けて、執務室を出るように促す。
これからまだ、打ち合わせがあるのだろう。
王太子は多分、今夜は眠らない。
それを確信してた。



 ◇◇◇


そして今朝、あいつの邸を急襲して、娘を連行した。
今日から調査が始まるのだろうと考えていたあいつは、娘の連行に反抗した。


「貴殿の言い分は、今日の貴族会議で聞こう。
 実行犯の御者から証言は得ているし、使用した馬車を私は確認した。
 会議までに己の処し方を考えておくように」 


グレイシー伯爵は会議までに、殺人犯として連行されていく次女のローラを、自分を、どうするか考えなくてはいけない。
15歳の娘を切り捨てたら、自分が退いたら、家門は生き延びられるのか?
咄嗟には決められぬまま、伯爵は俺に向かって叫んだ。


「娘を罪に問うのなら、王家だからといって、
逃げられませんよ!
 娘には理由を問われたら、正直に話せと言い聞かせました。
 それでもいいんですか!」

「全く問題はないな」

俺の返事に伯爵は驚いた顔をして、やがて諦めたように膝を付いた。


第1王女バージニアの罪を。
それを叱ることなく庇い続けた父親、国王陛下の罪を。

王太子は王国の貴族会議の場で晒すことに決めたのだ。
古いものを淘汰する為に。

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