この胸が痛むのは
「ガードナー様は私が帰るまで、奥からは出てこられなかったのですが、店員達がカードの話をしているのを偶然、小耳に挟んだのです。
 薄紫色のカードを用意出来るか、とか。
 夜会に間に合うようにお届けする……等と聞こえてしまって。
 それで、あのドレスはガードナー様がお召しになるのではない、とわかったのです」

「ガードナー侯爵令嬢が店員に向かって
『今日は第3王子殿下の代理で来た。
 クラリス・スローン侯爵令嬢の誕生日プレゼントなの』と、大きな声で嬉しそうに話されていたと、噂になっておりますが、その噂の出所は貴女ではない?」

証言を聞き取っていた法務官がコーデリアに確認した。


「いいえ、私以外にも店内に居た誰かがそのように噂を流したのかもしれませんが、私にはガードナー様がそのような事をおっしゃっていたのか、聞き取れませんでしたもの。
 大きな声なんて、ガードナー様が出されているところを拝見した事は一度もございません」

その通りだ。
大声を出すイライザ嬢なんて想像も出来ない。


「では貴女は、誰に、どのように、この話をされましたか?」

「……夕食の時に家族に話しました。
 あの有名な紫色のドレスを、ガードナー様が購入されたけれど、夜会に間に合うようにどなたかに贈った、カードの色を薄紫色に指定していた、と言っただけです。
 ……それと、お茶会の席で、何人かに話したかもしれません。
 ……だって!あのドレスは本当に素敵で!
 でも売り物ではないし、何よりあの色は特別な王家の色です。
 普通では着られない色なんです」


< 326 / 722 >

この作品をシェア

pagetop