この胸が痛むのは
「殿下の仰っていることも同じです。
 クラリス嬢への贈り物がきっかけなのかも知れませんが、それから起こった事の全てが殿下のせいだとは、私には思えませんね。
 遣り方を任せると言った王女は馬車で煽れとは命じていない。
 グレイシーは外れの坂道まで追いかけろとは言わなかった。
 御者は城下まで走らせたら充分だろうと、なだらかな下り坂に追い込んだが、雨の影響で、滑り落ちるとは思っていなかった」

「……」

「何人かで少しずつ犯した犯罪で、直接それに関わっていないひとりが全ての責任を感じているというのはおかしな話だ。
 それに、自分が全て悪いとアグネス嬢に打ち明けて、何を求めているのです?」

「彼女に話して許して貰わないと、先に……」

「許すと言って貰って、ご自分が楽になりたいだけでしょう?」

「……」

頭を殴られた気がした。
黙っているのが辛くて、全て話したいと思ったのは、自分が楽になりたいからだと指摘された。


「本当にご自分に罪があると思うなら、殿下は楽になってはいけない。
 死人が出ているのだから、これを糧に成長する等、口が裂けても言ってはいけない。
 胸の中にその罪を抱えて、この先も生きていきなさい」


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