この胸が痛むのは
ストロノーヴァ先生にお会い出来ないのなら、頼みの綱はリーエでした。
恋人と約束があっても、私が会いに行けばいつも優先してくれるので、毎回約束無しにホテルへ
遊びに行っていました。

それで週末の朝食の席で、祖母にこれからリーエに会いに行く予定だと伝えました。
祖母はリンゼイさんに渡して欲しい物があったから、用意するまで待っていてと言うので、庭園でぼんやり待っていると、メイド頭が箱を2つ抱えてこちらへやって来ました。
それを見て『誕生日の……』と、思いました。

4月には私の誕生日があり、それに合わせて
アシュフォード殿下から毎年プレゼントをいただいていたからです。
今年はリヨンからこちらに送ってくださったのです。


大きな箱には後側だけ裾の長くなったシンプルなブルーのワンピース。
小さな方には、今履いている物より1サイズ大きなダンスシューズが。
今年は紫色の小さなリボンが付いていて去年よりも踵が高くなり、ほぼ普通のヒールに近くなっていました。
そして、あの薄紫色のカードが。


『お誕生日おめでとう
 練習はダンスの教師とだけにするように
 裾捌きはおばあ様に教えて貰ってください』


私のデビュタントまで、毎年靴を贈る。
その約束を今年も守ってくださった。
本当に……殿下はお優しい御方だと、思いました。

……私の心のなかなど、知りもしないで。
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