この胸が痛むのは
「俺が君の顔をしていたら、1日の大半は鏡を
見て自分に見惚れているだろうな。
 本当に君は変わってる」


「……呪いの最後に、手鏡に姉にそっくりな自分の顔が映ったと言いましたよね。
 あの夜から、鏡で自分の顔を見られなくなったのです」


私の答えにオルツォ様は立ち止まられました。


「3年もちゃんと鏡で自分の顔を見ていない?
 いつもどうしてるの!」

「立ち姿くらいは大丈夫なんです。
 朝の用意でドレッサーの鏡の前でメイドが髪を整えてくれる時は目を瞑っています」

「……俺が君を気に入っているのは、君と居ると自分だけが変だって思わなくて済むからなんだ。
 自分でわかってる? 君は結構、俺と同じくらい変わってるよ」


同じくらいではないです。
私はオルツォ様よりもっと……

自分はおかしいのだと、わかっていましたから。


 ◇◇◇


それから新年を迎え、祖母の邸にドレスが届けられ、配達してきたサロンの店員さんに尋ねられました。


「この後、このドレスはいかがなさいますか?」

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