この胸が痛むのは
ドレスをどうするのかと、尋ねられた様でした。
それはどういう意味なのかと反対に尋ねました。


「申し訳ございません、お嬢様。
 この国ではデビュタントのドレスを色染めして、その後も着用される御方が多いのです」

「そうだったのね、お気になさらないでね。
 それはとても良い慣習だと思います。
 一度だけしか着ないなんて、母国での事です
けれど勿体無い事だと思っていましたから」

「誠に畏れ入りましてございます。
 手前どもでは色染め、もしくはパートナーだったお相手とのご結婚の際のウェディングドレスに作り替える御方も多くいらっしゃいますので、
そちらも承らせていただいております」


デビュタントに着用したドレスをウェディングドレスに作り替える……
そう言えば、オルツォ様がトルラキアではデビュタントのパートナーとご婚約される方が多いと
仰っていたような。


思い出のドレスで、初めてのパートナーの元へ嫁ぐ。
なんて素敵な事だろうと思いました。

……でも、私は。
色染めをお願いしました。


その2日後、私は祖母と共に、母国のデビュタントに参加する為、トルラキアを出国致しました。
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