この胸が痛むのは

第83話 アシュフォードside

スローン侯爵の頑固さには頭を抱えた。
『婚約者でもないのに』この一点張りだ。


じゃ婚約させてくださいと、無理を承知で言えば。 
アグネス本人は何と言っていますかと、冷静に
返される。
アグネス本人は……そこで俺は黙るしかない。 


俺は今まで色々とヤラカシを重ねてきて、
アグネスにはそれの説明と謝罪を重ねてきたが、
彼女からの信頼は0に、等しい。
それがわかっているから、面と向かって
『婚約者でもないのに』と言われても、黙って
いたのだ。


デビュタントのパートナーだけでいいじゃないかと、思う朝もあれば。
ここまでの6年間の集大成がこの日なのに、何で支払わせてくれないんだと、心が荒ぶる夜もある。
夜は駄目だな、要らないことまで考えてしまう。



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