この胸が痛むのは
告白してきたのも、リリアンだ。
1学年上の彼女からは何度か声をかけられては
いたが、心から消えない面影があって、応える
事はなかった。
それでも、彼女は卒業前に
『これで最後にするから』と、卒業パーティーのパートナーを頼んできた。

見た目が派手で気が強そうに見えたリリアンの、握られた両手の震えと、黄色がかった茶色の瞳が揺れているのを見て。
レイノルドは金色の髪と青い瞳の面影を、心の中から追い出す事にしたのだ。


そのパーティーの夜からふたりは付き合い始めた。
若干、リリアン主導の付き合いではあったが、
レイノルドは彼女が好きだった。
好き……好きだった、確かに好きだった。


 ◇◇◇


王城であらゆる女性から求められ、それに応えていた遊び人のクリスチャン・ライナスが、身辺を整理し始めたと聞いた。

何でも王太子殿下から直々に呼び出されて、何やら密命を授けられた、とか。
何年間か国外へ行けと。
第3王子に同行せよと。

噂の出所はわからない。
整理された女性からか。
情報通と知られていたレイノルドは、何人かに
反対に尋ねられて、それを知ったのだ。


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