この胸が痛むのは
予定より早く目覚めてしまった。

今夜の夜会も、やらなくてはいけないことが
多過ぎる。
帰りは真夜中を回るだろう。
出来るだけ眠っておかなくては。


そう思えば思うほど、眠れなくなって。
諦めたレイノルドはカーテンを開いた。


雨だった。
夜会が始まるまでには、止んでほしい。
雨の日は気分が沈む。
忘れたい事を、雨の匂いは思い出させる。




アシュフォード達と行きたいのだと、理由を
並べ立てたレイノルドに。
諦めたような顔で、リリアンは頷いた。


『簡単でもいいから、貴方が行ってしまう前に
結婚式を挙げましょう』と。


貴方が行く前に、ではなく。
貴方が行ってしまう前に、と。




リリアンには見えていたのだろうか。


一度離れてしまえば、元には戻れない。
……自分達の行方が。
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