研がれる私/長編エロティックミステリー
恋人役、決す!⑥



「いや、宮本ルイの共犯役は降りる。お前とは共犯関係よりも、激しく愛し合いながら、互いに命を奪おうとするシチュエーションの方がより刺激的だと考えたんでな」

間違いない…

この男が実行した生爪剥しという手の込んだ演出の狙いは、”その役”を得る過程にはおかれていなかった

あくまで、私を殺そうとする共演者に衣替えする際のインパクトが目的だったのよ!

最初から…

私はさすがに背筋を寒くしていたわ…


***


「で…、どうすんだ?互いに命を狙い合う役でオレと共演する”覚悟”がなけりゃ、恋人役は”他”でもいいんだぜ。決定権のある面接官はお前なんだからな」

「…」

今夜の私たちは、双方、相手の目から一時たりとも己の視線を反らさなかった

しかしそれは、見つめ合いでも睨み合いでもなかったと思う…

そう…、少なくとも私、宮本ルイは、石神康友の瞳の奥に喰いかかっていた

深い瞳の沼に向かって…


***


「いいわ、私の恋人役はあなたに決定するわ」

カレはややニヤリとしていたが、私の”選択”は、やはり最初からお見通しだったようよ

私はそれを承知で、私の”結論”をカレに献上するしかなかった…

こいつ…

私のすべてを見切った上で、”誘導”してる…

そしてこの後、私が何を口にするのかも

であれば、その前に確認しておくことがあるわ


***


「ここで一つ尋ねておくわ。先日のジャンクであなた、今回のイカレたストーリーの演出は、あくまで他から指示を受けたものではない。自分の意思によるものだって言ったわね?」

「ああ、ここまでの流れはすべて、オレの考えに沿ってだ。他に脚本を書いてる奴はいない」

カレは断言していた…

「…確かに刺激的よ。これから私たち二人の巡る淵は、どんどん危険になってくると感じてる。ヒシヒシレベルでね。でもそれは、このサイトのモンスター・スポンサーを喜ばす目的もあるの?あなたにとってはさ…。それとも、ただ自分の刺激を欲する気持ちの成せる行為なのか…」

「後者だな。確かにオレは、ビップ席でのぞき見してるモンスポ連中が興奮し鼻血をぶっ放すような、特上にかっ飛んだストーリーを見せて度肝を抜いてやろうって気はある。だが、奴らに気に入ってもらおうなんて思ってはいない。…これで、お前にもわかるだろう」

カレはそう答えると、不敵に笑っていた

私がなぜそんなことを聞くのか、同じ刺激中毒者のこの男は察している…

なら…、あとはカレのおっぽり投げたあの役ね…

それを誰が演るか

いえ…

カレからすれば、誰に演らせるのが一番”面白い”かだわ

言うまでもなく、その”面白い”は、より強い刺激を味わえるかがバロメーターになる…

フン、そうなればってことよ

こうなればね(薄笑)







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