逆転結婚~目が覚めたら彼女になっていました~

「もしもし文彦さん? 優衣里の様子、変じゃなかった? 」
(ああ、急に態度が変わったようだが。どうしたんだ? )
「分からないけど、ひょっとして何か気づかれたのかもしれないわね」
(え? マジか? )
「ねぇ、計画は速攻で実行した方がよさそうよ」
(何を言っているんだ? そんな事をしなくても、あいつは確実に死ぬぞ)
「でもこの計画に気づかれては、あの保険金は受け取れないわよ」
(だが、下手に行動すれば殺人になってしまうぞ)
「そうね…。とりあえず、何とかごまかさなくちゃ。ここまできて、計画が失敗したら何のために文彦さんと優衣里を結婚させてあげたのか分からないわ」
(とりあえず、もうすぐ帰るから)
「分かったわ」

 電話を切った彩は、どこか焦ったような表情を浮かべていた。

 そのまま屋上を後にした彩。


 彩がいなくなった後。

 コツン…コツン…靴の音が近づいてきた。

「…やっぱり、あの2人は伊集院さんを殺そうとしているんだ…」

 足音と共に現れたのは、まるでモデルのように背が高くスラっとした皇子様のような綺麗な顔立ちをした青年だった。
 紺色のスーツに赤いネクタイ、靴は黒い高級革靴。
 綺麗な顔立ちをしているのに、分厚い黒い眼鏡をかけてどこか厳つそうな目をしている所が、あまり人を寄せ付けない印象を受ける。

 この青年は営業部部長、九条麗人(くじょう・れいと)28歳。
 3年前に沙原コンサルティングに入社して、3年かけて営業部長へ出世した。
 あまり人と関わろうせず、口調もぶっきらぼうで愛想がない為社員達からは一線置かれている。
 仕事も出来てルックスもいいのに、なぜ人を寄せ付けない雰囲気を出しているのだろうか?

 

 営業部。
 優衣里が仕事に戻ってくると、外回りから文彦が帰って来た。

 茶髪の短髪に、いかにもチャラそうな顔をしている文彦だが、それなりのルックスで背も高く女子社員には好感が高い方だ。
 外回りに出ても取引先が女性の担当なら、契約をすんなりとってこられるようだ。
 沙原コンサルティングに入社して5年になるようだが、未だに平社員のまま出世はできないままである。
 家がそこそこのお金持ちで、父親は保険代理店の自営業をしていて資産もあるようだ。
 一人息子で可愛がられ甘やかされているのかもしれないが、女遊びは激しいと噂もある。
 
 茶色いジャケットに、シャツは高級ブランのシャツを着て、スラックスもブランド品、靴もブランドで揃えているが、どこか似合っていないように見える。

 文彦が戻ると同時に、定時の鐘が鳴った。
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