逆転結婚~目が覚めたら彼女になっていました~
「結婚を決める前に優衣里は、ちょっとした場面を見て誤解しているようだ」
「え? どうかなさったのですか? 」
「いや…。私の秘書が言い寄って来ていたのだが、優衣里が帰って来た時にちょうど居合わせて。捨てないでほしいと、私にしがみついて来た事があったのだが。その場面を見て、優衣里は私が再婚したがっていると思い込んでいしまったようなのだ」
「まぁ…」
「もしかして、あの男を選んだのは私への当てつけではないかと思っていた。ろくでもない男と結婚して、クズな娘だと世間にアピールしたいのかと…。私は、そう思っていたよ」
「そうですね。お嬢様、ご結婚を決められたわりには。なんだか、悲しそうな目をしておられましたのでちょっと心配しておりました」
優造が優衣里から結婚を決めたと聞かされたのは、2週間前だった。
交際している人がいるとは話していたが、結婚まで決めるとは、急な事で優造も驚くばかりだった。
「私、結婚する事に決めました」
久しぶりに夕食を一緒に食べていた優造と優衣里。
優造はちょっと驚いて、食べる手を止めて優衣里を見た。
結婚を決めたというわりには、優衣里は幸せそうな目をしていなかった。
どこか怒っているかのようで、優造と目を合わせてくれなかった。
「優衣里が、結婚する事で幸せになれるなら。私は何も反対しないよ。どんな人なんだ? 」
「同じ職場の人です。名前は朝丘文彦さんです。ご実家は、保険代理店をなさっているとか」
「そうか。同じ職場の人なら、気心も知れているから安心だな」
「近いうちに、両家の顔合わせをしたいと思っています。お時間、空けてもらえますか? 」
淡々と答える優衣里に、優造はちょっと疑問を感じた。
結婚が決まって幸せなはずなのに、笑う事もしないのは何故だろう?
「優衣里。…お前が結婚するのは嬉しいのだが…私はちょっと、寂しくなるな」
「そうなのですか? 私がいない方が、都合がいいと思いますけど」
「なぜだ? 」
「結婚もしていない娘がいるようでは、お父さんも好きにできないでしょうから」
好きにできない。
その言葉を聞いて、優造はきっと優衣里はあの場面を見たのだと確信した。
「優衣里、これだけは言っておきたいのだが。私は、この先もずっと再婚は絶対にしない」
ん? と、優衣里は優造を見た。
優造は嘘は言っていないようだった。
だが、その時に優衣里には素直に信じることが出来なかった。