逆転結婚~目が覚めたら彼女になっていました~
床下の秘密
 
 歩道橋の近くまで部長の麗人が歩いてくると、迎えの車が待っていた。

「よっ、兄貴」
 後部座席から顔を出した純也。

 部長の麗人は後部座席に乗った。

「なんだか騒々しかったけど、大丈夫か? 」
 車が走り出し純也が訪ねて来た。
「何とか大丈夫だった。けど、お前は何をしているんだ? 萩野彩が妊娠したと言い出しているぞ」
「はぁ? まさか俺の子供って言っているのか? 」
「ああ」
「そんなのありえねぇよ。俺、起たないし」
「それ以前に絶対にありえない事はわかる。だが、かなり強気だったぞ」
「そっか」

 スッと、一通の封筒を渡してきた純也。

「これ、萩野彩が仕事中に同僚の男とサボってホテルに行っていた写真だ。そして、彼女に絡んだ男達が行方不明になっている情報が入っている。ひき逃げのとき、唯一証拠に近い写真も入れといたから参考までに見ておいてくれよ」
「わかった」

 純也はじっと部長の麗人を見つめて来た。

「なんだよ、そんなに見つめて」
「いや、兄貴も本気で恋したんだって思ったんだ」
「からかうなよ」
「からかってないよ、ずっと気持ち押し殺している兄貴見ているのは辛かったから」
「心配しなくていい。お前の方が、よっぽど辛かっただろう? 」

 フイッと悲しげな目を浮かべた純也…。

「彼女は元々短命の人だったから。…それほど長く生きられなかった。俺は、そんな彼女に幸せになってほしくて同棲してそばにいることにしたんだ。…日に日にやつれて行く彼女を見ていて、辛かったけど。それなりに幸せだった。だが…彼女は…」

 ふと、窓の外に目をやった純也。
 すると、反対側の道を歩いている彩の姿が目に入った。

 彩の隣には若い男が一緒に歩いていた。

「ちょっと、止めて」

 道路わきに車が止まると、純也は彩の歩いている姿をじっと見た。

「アイツの家、この辺りだったな…。ちょっとごめん、俺調べたい事があるからここで降りる。すぐに帰るから心配しないでくれ」

 急ぎ足で純也は車から降りて、彩の跡を追って行った。

 部長の麗人は、純也の姿を目で追った。


 走り出す車の中。
 部長の麗人は、純也から受け取った封筒の中を見た。
  

 萩野彩。
 父親は3歳の時に行くへ不明になり、母親が一人で育てて来た。
 
 母の名前は萩野千春(はぎの・ちはる)。
 実家はお茶屋さんを営む自営業だが、時代の流れで経営は苦しく開店休業中で貧しく育っていた為、お金持ちと結婚したいと望み萩野家に嫁いできた。
 彩の父親は萩野幹夫(はぎの・みきお)。
 IT企業を経営している社長の息子で、年収1000万以上で、広い豪邸に住んでいた。
 結婚後、同居はしたくないと言って一軒家を購入し、家族4人で暮らしていた。
 
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