Cherry Blossoms〜黒に咲く紅〜
医師たちの決断
「では、まずは検尿をお願いします。終わりましたら身長と体重を測って、採血を取ります」

慎之助がそう説明すると、村人たちはアルオチと鈴芽とオリバーから紙コップを受け取り、検尿をするためにトイレへと行き始める。

「さあ、ママと一緒におしっこ取りに行こうか」

「うん!」

先ほど、武夫が怒っていた時に部屋にいた女性が小さな男の子を連れて部屋を出て行く。彼女はこの家の一人息子である健人(けんと)の妻である薫子(かおるこ)で、二人の子どもの名前は湊(みなと)と言う。健人は今出張中だそうだ。無邪気に笑う湊に対し、薫子はどこか疲れたような笑みを浮かべていた。

「先生!検尿終わりました」

検尿を終えた人たちがまた部屋に戻ってくる。桜士は「こっちに待って来てください」と笑みを浮かべ、村の女性たちは頰を赤く染めながら「は〜い」と高い声で返事をした。

ほとんどの人が検尿を終えて行く中、桜士はあることに気付く。まだ武夫と静江が検尿を終えていないのだ。それに気付いたのは、桜士だけではなかった。
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