王子は香水姫を逃さない
ロゼリアは下を向いて、両手を握りしめた。なんと答えて良いかアーサーの了承もなしに、変な返事はできなかった。
「では、行こう。」
皇太子は、ロゼリアをエスコートしてアーサーに向かって歩き出した。
アーサーの横には、栗毛色の髪を結い上げた、きれいな若い娘がいた。
アーサーをキラキラした目で見つめ、話しかけている。
「アーサー、楽しんでいるかい?」
「ありがとうございます。」
アーサーは皇太子に向かって礼をした。
ロゼリアはアーサーよりも、自分をにらむように見ている隣の令嬢に気をとられていた。
「紹介しよう。こちらは、エセンのロゼリア伯爵令嬢。アーサーは知り合いかい?もちろん自国の貴族令嬢だから会ったことはあるはずだが。この間、城下へ降りたとき花屋にいたろう。あまりの美しさに調べたら伯爵令嬢というので、母上に紹介した。」
「もちろん、存じております。久しぶりだね、ロゼリア嬢。どうしてあんなところにいたのか教えてほしいね。」
「アーサー様。当家の商いを手伝うため、こちらにきておりました。」
ロゼリアはアーサーに合わせて答えた。