王子は香水姫を逃さない

つかの間のデート


 舞踏会から帰ってきた翌日。
 その日は商品がなくなってしまったこともあり、生花以外は販売が出来なかった。
 
 サラから言われて、店に出ないで、離れで蒸留装置を使いながら香水を作っていた。
 花びらを集めているエリンは、横で座って作業をしている。
 
 「姫様。アーサー様に見つかってしまいましたし、よくご相談のうえで今後のことは考えた方が良いのではありませんか?」
 サラの言うとおりだということはわかっている。
 
 ただ、短期間で商品が思う以上に売れているのはありがたいし、この国で伯爵家の商売が軌道に乗りかけている。
 王室でも販売のめどがたった。素晴らしい成果である。
 
 だが……。それと引き換えにして、自分の素性がばれて、バージニア皇太子の興味をひいてしまった。
 アーサーの縁談もこちらにくればそういうことになるのはわかっていたのに、知ればあせってしまう。

 ヒヒーン……ロンの鳴き声がした。「ロゼリア来て」ロンの心話が聞こえてきた。
 エリンと一緒に馬小屋へ行くと、小屋の前にアーサーとキースがいた。
 ノエルを連れている。キースも自分の馬を引いている。

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