王子は香水姫を逃さない
 何も答えないロゼリアを見て、皇太子はロゼリアの腕を引いて、突然抱きしめた。
 ロゼリアは、考えているうちに抱き込まれてしまい、身体を固くしたが拒むことはできなかった。
 
 「ロゼリア。君から目が離せない。美しいだけでなく、自分の考えを持ち、凜として馬に乗る姿にも魅せられた。私のものにしたい。こんな気持ちは初めてなんだ。ディアナ姫との婚姻があったとしても君を娶るつもりだったからね。」
 アーサーとは違う香りに包まれて、本能が違うと叫んでいる。
 皇太子の胸を押して、距離をとった。
 
 「皇太子様、私は自我が強い、生意気な女です。おそらく、目新しい私に興味がわいているだけです。皇太子様ほどの方でしたら、他にぴったりの姫がおられます。何も、心がない私をお求めにならずとも良いのです。私の心はすでにアーサー様のものです。」
 一歩下がって頭を下げた。

 「ロゼリア。私をなめてもらったら困るな。エセンより大国であるバージニアの皇太子なんだよ。エセンの第二王子に負けるとでも思っているのかい?あいつには命を救われたが、君のことに関しては秘密にされていたのもあって許せないんだよ。君の気持ちも変えてみせる。全く心配していないよ。後で、王様と一緒にお許しをもらおう。連絡するよ。」
 
 ロゼリアのほおにキスを落とすと、あっという間に出て行ってしまった。

 
 


 
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