王子は香水姫を逃さない
 「どういうことだ?」

 「何もかも、彼にとられるのは我慢ならない。弟にもしたくない。」

 顔を真っ赤にして、早口でつぶやくように吐き捨てる皇太子を見て、王は笑い出した。

 「全く。お前はまだまだだな。まあ、恋敵を義兄弟にするのは可哀想か。だが、この機会にアーサー王子から学ぶことも必要だ。国の交渉という政治についてだ。」

 「そうですね。それに、皇太子よりロゼリア姫のほうがうわてでしょう。他国の姫に操られでもしたら、困ります。」
 王妃がウインクしながらロゼリアを見た。

 王は、正面を向いて二人に言った。
 「よかろう。この提案を受け入れよう。こちらの詳しいエネルギー支援とそちらの武力、魔導師団の援助、婚姻関係解除については書面におこそう。後ほど、それができ次第、正式に合意したら条約締結式をしよう。それで良いかな、二人とも。」
 
 アーサーとロゼリアは顔を見合わせ、王に向き直ると了承の返事をした。

 アーサーは最後にひざまずき、挨拶した。
 「このたびは、事前にいろいろお伝えせず、ご迷惑をおかけいたしました。今後も我が国との強い結びつきをお願いいたします。」
 
< 86 / 92 >

この作品をシェア

pagetop