イケメン検事の一途な愛


「何かあったの?」

顔面蒼白の彼女は、正気を失ったかのような表情でエレベーターを降りた。

「とりあえず、部屋に」

彼女の肩を支え、自宅へと連れてゆく。

無言のまま、息をしているのかも疑わしいほどに微動だにせず。
一体何が彼女をこんな風にさせてしまったのか、分からない。

洗面所に彼女を連れて行き、浴槽に湯を張る。

「ちょっと待ってて」

パニック状態に陥る俺だが、とにかく着替えを用意しないと。
寝室のクローゼットから長袖のTシャツとハーフパンツを手にして彼女のもとへ。

「これ、ウエスト部分が紐で結べるから」

サイズが合わないのは仕方ない。
女性用のものなんて無いんだから。

「風邪ひくよ、湯に浸かって温まって」
「………」

反応がない。
うんともすんとも言わず。
こくりと頷くこともしない。

「リビングにいるから」

呆然と立ち尽くす彼女の顔を覗き込み、声を掛ける。
1人にさせるのは心配なところだが、さすがに風呂に入れてあげるわけにもいかず。
きっと1人で入れるだろうと思い、その場を後にした。

リビングテーブルの上に置かれた携帯電話で父親に連絡を入れる。
すると、病院内は彼女がいなくなって騒動になっていた。

とりあえず、父親を通して彼女の事務所へ俺の自宅にいることを伝えて貰った。
すると、すぐさま事務所社長から連絡が入る。

彼女の安否を心配して、狼狽えているのが分かる。
すぐさま迎えに来るのかと思いきや、返って来た言葉は『どうか、湊を宜しくお願いします』と。

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