イケメン検事の一途な愛
芸能界という世界に身を置いている彼女。
当然、知り合いも多いだろうに。
何故、俺のところに来たのだろうか?
とりあえず、追い返せる状況ではないし、あんな状態の彼女を放り出せない。
彼女を今晩泊めるとしても、身の回りのものが何もない。
マネージャーが出入りすると、マスコミが嗅ぎつけることも予想されるため、姉に女性物一式を頼んだ。
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お風呂から出て来た彼女は顔色がよくなったものの、表情は変わらず。
髪も乾かさず、足音もさせずにリビングへやって来た。
「ここに座って」
彼女をソファーに座らせ、ドライヤーで髪を乾かす。
ふんわりと柔らかい彼女の髪。
肩ほどの長さのため、さほど時間がかからず乾ききった。
何も話そうとせず、俯き加減で魂が抜けたかのような表情で。
無理に聞き出すのは無粋だし、自分から言える話なら聞き出さなくても話すだろう。
今は彼女がいられる場所を提供するだけ。
ただそれだけ。
ホットミルクを彼女の手に。
暫くそれを見つめていた彼女。
数分して、ゆっくりそれに口を付けた。
その間に寝具カバーを替える。
前日にハウスキーパーが入ったばかりだが、男臭かったら申し訳ないし。
自宅に女性を泊めたことがない俺は、想像以上に焦っていた。
洗面台の脇に新しい歯ブラシセットを用意しておく。
あと他に何したらいいんだ?
ネット検索して漏れが無いか確認しながら、横目で彼女の様子を窺うと、不意に視線が交わった。
「ん、どうした?」
「………ごめんなさい」
久しぶりに聞いた彼女の声は、今にも消え入りそうなほど弱々しかった。