離婚予定の契約妻ですが、クールな御曹司に溺愛されて極甘懐妊しました
「私の趣味でよかったんですか? 熊のワンポイントですよ?」

 泰雅に頼まれて純玲が選んだのはシンプルなネイビーの胸ポケット付きTシャツだが袖の所にクマのワンポイントが施されたものだった。とぼけたクマの顔がかわいくてつい勧めてしまった。普段着だからいいのかもしれないが。

「いや、かわいいから沢山着るよ」

「クールで大人な弁護士さんが“かわいいから着る”って……」

「なんだそれ。弁護士さんだってかわいいものはかわいいんだよ。君が選んでくれたらなおさらだ」

 泰雅の笑顔はいつもよりリラックスしていて、無邪気にすら見える。純玲は「そのギャップがズルいんですって」つい小声で呟いてしまった。

 ふと純玲は(今更だけど今日のこれって、完全にデートじゃない?)と気づく。

 思い起こせば肇とは映画を見たり、外で食事をしたりとデートらしきことをしたことはあったが、回数は数えるほどだった。

 今のように当然のように手を引かれて歩くこともなかったし、ここまで気を遣わず話すこともなかった。そしてこんなに自然と笑顔になれたことも。
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