離婚予定の契約妻ですが、クールな御曹司に溺愛されて極甘懐妊しました
 これからもあの綺麗な黒い瞳に自分だけを映したいと思う身勝手な男がでてくるだろう――自分のように。

 やはり、早々に結婚したのも、百田の顧問弁護士になったのも正解だった。
 彼女の夫として周りの男をけん制できる。本来の目的とは違っているが。

 こんなにも強い執着を感じるのは純玲に対してだけ。
 だから彼女に結婚生活の終わりを匂わすような発言をされ、激しい焦燥感に襲われたのだ。

(君は残酷だな。ただでさえ、いつ君が“向こう”に奪われるかもしれない恐怖と毎日対峙しているのに)

 奪われないためには慎重に確実に、かつ迅速に動かなければいけない。

(昨日高梨から得た情報の裏付けを早急にしなければならないな。最悪の事態になった時に切れるカードは多い方がいい。向こうの意図が読めないからなおさらだ)

 難しいが、やるしかない。
 彼女を苦しめるものは可能性も含めて全て排除する。それがたとえ彼女の“家族”であってもだ。

 相変わらず純玲は目を覚ます気配もない。

「疲れさせたよな……ごめん。今日は、ゆっくり寝ていてくれ」

 泰雅は純玲の黒髪を撫でながら呟く。
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