離婚予定の契約妻ですが、クールな御曹司に溺愛されて極甘懐妊しました
 エントランスを通り過ぎ、ビルから外に出る。
 10月に入り、陽が落ちるのが随分早く感じるようになった。

 さて、夕食はどうしようかと考え始めた所で、ポン肩を叩かれる。

「純玲」

 振り返るとスーツ姿の肇が立っていた。口元には笑みを湛えている。タイミングのいい登場に待ち伏せされていたと思い、思わず身を引いてしまう。

「……何の用ですか」

「そんな冷たい態度取らなくたっていいじゃないか。ちょっと、話を聞いてほしくてね」

 完全無視すると泰雅と約束したのだ。取り合ってはいけない。

「私には話すことはありませんので。では」

 踵を返した純玲の背中に思いがけない言葉が投げかけられる。

「なあ、君って自分の本当の父親のこと、知ってるのか?」

「えっ?」

(本当の父親?)

 何を言い出すのだろうと、つい振り返って反応しまう。

「前に言いましたよね。実の父は亡くなっていて、私は養子だって」

 何をいまさらという純玲の反応に肇は少し驚いた顔をした後、「ふーん、なるほど、やっぱり」と言ってニヤリと笑う。

「純玲、君の父親のことを教えてやるよ。それから――旦那の本性も」

「どういうことですか?」

 困惑する純玲に肇は言う。
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