離婚予定の契約妻ですが、クールな御曹司に溺愛されて極甘懐妊しました
 この子の存在が泰雅を自分に縛り付けることにならないようにしよう。純玲はそう思っていた。
 世の中、普通に愛し合って結婚し子供ができても、離婚する夫婦はいくらでもいる。同じだと思えばいい。

 泰雅が嫌でなければ、子供とは定期的に会ってもらえたら嬉しい。自分のように実の父親の顔も知らないより、はるかにいい。

「私ったら、まずは泰雅さんに伝えなきゃいけないのに。先走って色々考え過ぎかな」
 独り言ちて苦笑する。

 しかし、当の泰雅は急遽地方のクライアントに先に出張になってしまったといって、昨日から出てしまった。
 あすの夜に帰宅予定なので、伝えるならその時だろう。

 緊張するけど、ちゃんと伝えよう。妊娠がはっきりした今、しっかり腹を括っている自分がいた。


 翌日、一日の業務をつつがなく終えた純玲は自社ビル1Fのエントランスロビーをひとり歩いていた。
 先週末は社長と神崎に迷惑を掛けてしまったが、今週は順調に業務をこなしている。

 泰雅からはすでに出張先からは戻っているけれど、事務所で片付ける仕事があるので帰りは遅くなりそうだとメッセージが入っていた。
 だか、純玲は遅くなっても彼の帰りを待って話をするつもりでいた。
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