離婚予定の契約妻ですが、クールな御曹司に溺愛されて極甘懐妊しました
 社長の表情ははっきり見る事はできなかったが、祝福してくれていると信じている。

 純玲はそのまま歩みを進めた。

 その時、ふと実母の顔が脳裏に浮かんだ。

(……ママ)

 純玲は心の中で話しかけた。

(ママ、好きな人と結婚できたよ。赤ちゃんも生まれるの。私、幸せだよ……ありがとうね。私を産んでくれて)

 記憶のままの優しい表情で彼女は「良かったわね」と笑ってくれている気がした。純玲もベールの中で微笑む。

 視線の先では祭壇の前で泰雅が穏やかな笑みを湛えながら、純玲がくるのを待っていた。

 純玲はしっかりした足取りでまた一歩踏み出す。

 最愛の人の元へと。
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