離婚予定の契約妻ですが、クールな御曹司に溺愛されて極甘懐妊しました
「泰雅さん、これからもよろしくね……大好き」

 虚をつかれた顔をした後、泰雅は溜息混じりに言う。

「……全く、俺の花嫁は、かわいすぎて困る」

 この直後夫から濃いめの口づけを返された為、結局口紅はもう一度塗り直す羽目になるのだった。


 チャペルのドアが開き、目の前に真っ白な空間が広がる。

 純玲は父にエスコートされ、ゆっくりとバージンロードを進む。

 高い天井に飾られたシャンデリアが、前面に開けた窓から差し込む自然光にキラキラと反射している。

 白を基調としたチャペル内の左右の席で列席者が出迎える。
 母、泰雅の両親と兄夫婦、高梨所長、麗、麗の婚約者、後輩弁護士の的場もいる。泉を始めとした双方の友人も数人。

 そして、後の方の席にスーツ姿の男性が座っていた。

『もし挙げるなら、上司は参列してもいいのかな』
 結婚式について以前神崎が言っていたのは今日のことを見据えていたのかもしれない――社長に娘の花嫁姿を見せるために。

『上司』として神崎と共に座る雄一郎とベール越しに目が合った気がして、純玲はゆっくり頭を下げた。

 この人がいたから私は生まれてこれたのだという感謝を込めて。
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