離婚予定の契約妻ですが、クールな御曹司に溺愛されて極甘懐妊しました
(無理……この状況で本当のことは言い出せない)

 純玲が一番辛いのは、周囲の反対を押し切ってまで養子にし、育ててくれた両親を悲しませることなのだ。
 こんなに喜んでくれている母をがっかりさせたくない。

 結局純玲は否定するどころか、後日改めてふたりで実家に行く話までして電話を切った。

「先生、なんで……」
 母との会話で疲れ切った純玲は力なく泰雅を見る。

「君の事だから話を進めようとしたら『契約結婚なんて周りを騙すようなことは止めましょう』と言い出しそうだなと思って先手を打たせてもらった。俺としては君を逃がしたくないんだ……どうしても」

 その言葉に純玲はドキリとする。まるで純粋に自分を妻として熱望されているような気がして。

(勘違いしちゃダメ。先生は所長のお嬢さんとの縁談を断るため、既婚者になって仕事をしやすくするために妻が欲しいって言ってたじゃない)

 2年間だけ契約結婚しませんか言われて、すぐにはいわかりましたと了承する女性はそうはいないだろう。自分は彼にとっては貴重な契約相手。だから彼は自分を逃したくないのだ。
< 49 / 248 >

この作品をシェア

pagetop