離婚予定の契約妻ですが、クールな御曹司に溺愛されて極甘懐妊しました
「私、たいして気にしていないつもりだったんですけど、演技でもああゆう風に言ってもらえて、何だかスッとしちゃいました。いろいろ言われ続けて実はダメージを受けていたのかもしれません」

 自分に向けられる悪意なら流して我慢すればいいと思っていたけれど、こうして寄り添い、庇ってくれる人がいることはどれだけありがたいことだろう。

「純玲」

 泰雅はふいに純玲の手を取り、立ち止まった。驚いた純玲も立ち止まり彼を見上げる。

「君は俺の妻だ。これからも君を夫として守っていく。だからがんばりすぎないで、なんでも頼って欲しい」

 優しい言葉と表情。嬉しいはずなのに、同時に胸が締め付けられるような切なさを覚える。

(こんなに大事にしてもらってるのに……なんでこんなに苦しいの?)

「……はい」

 純玲は複雑な感情を持て余したままできるだけの笑顔を作り、答えた。

「じゃあ、今日は何か食べて帰ろうか」

 泰雅は繋いだ手に力をこめると再び歩き出した。
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