離婚予定の契約妻ですが、クールな御曹司に溺愛されて極甘懐妊しました
 もちろん泰雅も泉も就いている職種や収入だけで人の価値を判断する人間ではない。
 これはあえて瑠美や肇の悪意から純玲を守ろうとしてくれているのだ。

「お眼鏡にかなって何よりでうs。武井さんとは気が合いそうだ……では、失礼します」

「はい。純玲、また明日ね」

 泉はにっこりと微笑む。泰雅も笑みを浮かべ、置いてきぼりになっていた純玲を促すようにその場から連れ出した。

「はぁ……わざとあんなこと言ったんですね」

 やっとビルから脱出し、やや早足に歩く泰雅の横に並びつつ純玲は言う。

「君は大人だから彼らに何か言われてもスルーしてしまうだろう? でも俺は大切な妻をバカにされて平気でいれるほど出来た人間じゃない」

「泰雅さん……」

(大切な、妻……)
 
 契約上必要だから、ということは分かっている。でも、それだけでは無く、彼が自分を人として尊重し大切にしてくれていることも純玲はわかっていた。

「あの……ありがとうございます」

 前を向いていた彼の顔がこちらを向く。
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