素直になれないお姫様の初めてのベッド事情
「……ふぅ……」

私は、緊張しながら、初めて訪れたマンションの一室のインターホンを鳴らす。

「どうぞ」

いつもの涼しい顔で、玄関扉を開けた、千歳のワイシャツにカフェエプロンをつけた姿に、心臓は、すぐにドキンと跳ねた。

千歳は、そんな私を気に目留めずに、いそいそと、すでにいい香りのしているキッチンへと向かっていく。

「実花子、ご飯、もうすぐできるからね」

「どうも……」

私は、千歳が用意してくれていたスリッパをつっかけるといい香りに誘われるように、千歳の背中を追ってリビングへと向かった。

「綺麗にしてんのね」

「言ったでしょ。僕、片付け好きだから」

千歳とクリスマスを過ごしてから1週間、仕事納めを終えた私は、初めて千歳の部屋を訪れていた。

クリスマスのあの日、千歳は、私の家に泊まっていったが、私は、風邪を引いていたからか、狭いシングルベッドの上で千歳に抱きしめられている間に眠くなって、すぐに寝てしまった。

次の日、千歳は、朝早く自宅に戻っていき、会社でバッタリ会った際には、パリッとしたワイシャツにスーツ姿で、朝方まで、私と一緒にいたのが嘘だったかのように、互いに挨拶だけを交わした。
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