俺様ドクターは果てなき激愛で契約妻を捕らえて離さない
「山之内さんとは子供の頃からの知り合いなので」
彼の父もまた私の父の病院で働く医師だったこともあり、子供の頃から家族ぐるみで付き合いがある。年上で面倒見のいい優しい人なので、学生の頃は親身になって勉強を教えてもらっていた。
「あっさりと食事の誘いを受けていたけど、本当にいいの?」
「えっ」
なにか問題があるのだろうか。
「でも、山之内さんは学会の帰りにわざわざ私に会いに来てくれたので。食事の誘いを断るのも失礼だと思って」
「芙美ちゃんがそうしたいと思ったなら別にいいんだけど……」
未華子先生が小さくため息をこぼす。
「ああ見えて早瀬くんはけっこう嫉妬深いからね」
「早瀬先生ですか?」
どうして彼の名前が出てくるのだろう。未華子先生がなにを言いたいのかよくわからずきょとんとしていると、不意に彼女の手が伸びてきて私の鼻をきゅっと摘まんだ。
「どうなっても、私は知らないぞ」
私の鼻から手を離した未華子先生は背中を向けると、ナースステーションを出て行ってしまった。
摘ままれた鼻をそっと手でおさえる。未華子先生はなにを言いたかったのだろう。
よくわからなくてしばらく考えていたけれど、カルテの整理が途中だったことを思い出して、慌ててその作業に戻った。