壊れるほどに愛さないで
「美織!ごめん、遅くなって!」 

振り返れば、雪斗が、私に駆け寄り、すぐに私の頬に触れる。

「雪斗……?」

「何にも、されてないよな?」

「え?どういう事……?」

すぐに雪斗が、私を抱きしめた。

「良かった……さっきの電話……非通知設定だったんだ……」

驚いて雪斗を見上げると、雪斗が、私が目の前にいる事を確かめるように、後頭部をそっと撫でた。

「雪斗……何か話したの……?」

「あぁ。声はヘリウムガスで変えられてて分からなかったけど……美織にこれ以上近づいたら……美織を傷つけるって言われて……マジで、焦った……」

雪斗の声が少し震えている。私は、雪斗の背中を摩った。

「大丈夫だよ……写真見てただけだし。誰も来なかった……あと、盗撮写真と似た写真も見当たらなかったし」

「なかった?俺も端から見ていい?盗撮写真と似た雰囲気の写真、どっかで見たことある気がしてさ……。ん?美織の後ろの作品ってマリア像?珍しいな」

マリア像の写真の真ん前に立っている私は、マリア像の写真が、雪斗の視界に、しっかり入らないように、すぐに出口を指差した。

「ごめん、雪斗、お腹減っちゃった」

「え?あぁ……ま、減ったよな」

「手がかりも残念ながらなかったけど、雪斗の写真見れて嬉しかった。ありがとう」

私は、さりげなく雪斗の手を引くと出口に向かって歩いていく。雪斗が、マリア像の写真に気づく前に、この場から立ち去らなければならない。

「美織が、喜んでくれたなら良かった……じゃあ、大学の近くに美味いラーメン屋あるから行こっか」

「うん」

雪斗には、言えなかったが、はっきりしたのは、桃葉が、私のストーカー事件と関わっていること。

そして、同じタイミングで雪斗にかかってきた電話……。


ーーーー犯人は、二人いるという事だ。
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